私たちは、ミラクルメソッド 編集部です。
【ミラクルメソッド編集部】は新しい英語教育を求めて活動 している様々な分野のクリエーターのグループです 。
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もう何年も前のことです。
ある、丸顔でぽっちゃりした男の子に英語を教えたことがあります。私たちの町で一番の中高一貫の進学校に合格したその男の子は、お父様、お母様にとって自慢の一人息子でした。
「今まで中学入試の受験勉強しかしてこなかったので、幼い頃から英会話を習ってきた同級生たちの中で、うまく英語についていけるかしら」とそのお母様はとても心配されていました。それで中学1年生になったばかりの時から私たちのところで英語の勉強をすることになったのです。
その子は、実に素直に私たちが行う「英語音声を主体とした学習」に取り組んでくれました。学校が配布した教科書と副教材を徹底的に音読し、ディクテーションし暗唱しました。文法は大西 泰斗(おおにし ひろと)先生の提唱するイメージをもとにした学習で身につけ、英単語は私たちの教材ミラクルメソッド シリーズを使ってフォニックス法で暗記しました。彼はみるみるうちに英語が抜きん出るようになり、毎年東大・医学部に数多くの生徒を送り出す学校で一桁の順位を争う優秀な成績を収めるようになりました。
彼は、中学2年の夏休みの宿題、自由英作文「将来の夢」で、高校を卒業したら医学部に入りiPS細胞の研究を行って不治の病とされている様々な病気の治療法を発見したいと見事な英語で書きました。
その彼の生活がおかしくなったのは中学3年生の秋あたりからでした。上履きが靴箱からなくなるようになりました。体育の授業から帰ってみたら、カバンの中に入れていた教科書が引き裂かれていました。ノートや消しゴムなど文房具が失くなるのは日常茶飯事で、教室に不在の時に荷物が引出され床にばらまかれていたこともありました。
やがて学校はその異常事態に気がつき、親も含めた三者面談が行われました。そこで初めて彼は先生と親に打ち明けました。実は中学入学以来ずっと友達がいなかったこと、同級生は誰も自分に話しかけてくれないし自分から話かけても嫌そうに無視されるばかりだったこと、だからこれまでの3年間、毎日売店に行き、売店のおばちゃんと一言二言話をすることが唯一つのなぐさめであったこと。
お母さまが涙を流しながら私たちに話してくれたのはそういう内容でした。
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英語が大好きで英語の成績が抜群だった私たちの生徒は、私たちの町で一番の進学校を去り、私たちの元からも姿を消しました。
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中学2年の夏休みの自由英作文の宿題で彼は書きました。いつかiPSの研究に携わり不治の病で困っている人たちを助けたい、と。周りの同級生からそこまでひどく扱われ、売店のおばちゃんと話をすることで3年間の孤独に耐えていた彼の心の中は、それでも希望と善意の熱い想いに満ちていたのです。
今でも彼は私たちの一番の自慢の生徒です。
これから何年経とうが何十年経とうが、彼は私たちの自慢の生徒で、心の中に奇跡を持って生きるミラクルチルドレンの一人なのです。